株式投資型クラウドファンディングにおけるメリットの一つであるエンジェル税制。
エンジェル投資をすると税制上の優遇措置を受けられるという制度です。
今回はこのエンジェル税制の仕組みや確定申告方法、対象企業などを徹底解説していきます。
Contents
エンジェル税制とは??
エンジェル税制とは未上場のベンチャー企業に出資した投資家のための税制上における優遇措置のことです。
投資時点と売却時点、どちらでも優遇措置を受けることができます。
エンジェル税制は下記の二つが存在します。
- 優遇措置A
- 優遇措置B
エンジェル税制:優遇措置A
優遇措置Aは下記の金額が優遇されます。
ベンチャー企業への投資額 – 2,000円
この金額が総所得金額から控除されます。
もし、100万円を投資したとしたら99.8万円が控除されるということです。
ただし控除対象とな投資額の上限があります。
「総所得金額 × 40%」もしくは1,000万円 のどちらか低いほうです。
年収500万円の人だったらその40%、つまり200万円までが控除の対象です。
所得からの控除限度額が800万円に減額されます。
ただし引き下げは令和3年1月1日以降の投資に適用されます。
エンジェル税制:優遇措置B
優遇措置Bは下記の金額が優遇されます。
全出資額をその年の株式譲渡益から控除
わかりにくいので例をだして説明していきます。
まず、エンジェル税制の優遇措置Bが適用される企業に30万円出資したとしましょう。
上場株式の売買で100万円の利益を出していたとしたらそこから30万円を控除できます。
最終的に70万円に対して課税されます。
また、優遇措置Bに関しては投資額の上限はありません。
エンジェル税制の対象企業になる要件
どういった企業ならエンジェル税制の優遇措置を受けることができるのか詳しく解説していきます。
下記が対象企業になる要件です。
優遇措置Aの場合
まずは優遇措置Aの場合から見ていきましょう。
対象となる企業は創業(設立)5年未満の中小企業者であることが絶対条件です。
さらに設立経過年数によって要件が変わってきます。
1年未満 & 最初の事業年度を未経過 | 研究者あるいは新事業活動従事者が2人以上かつ常勤の役員・従業員の10%以上 |
---|---|
1年未満 &最初の事業年度を通過 | 研究者あるいは新事業活動従事者が2人以上かつ常勤の役員・従業員の10%以上で、直前期までの営業キャッシュフローが赤字 |
1年以上 〜 2年未満 | 試験研究費等(宣伝費、マーケティング費用を含む)が収入金額の5%超で直前期までの営業キャッシュ・フローが赤字。または新事業活動従事者が2人以上かつ常勤の役員・従業員の10%以上で直前期までの営業キャッシュフローが赤字 |
2年以上 〜 3年未満 | 試験研究費等(宣伝費、マーケティング費用を含む)が収入金額の5%超で直前期までの営業キャッシュ・フローが赤字。または売上高成長率が25%超で営業キャッシュ・フローが赤字 |
上記条件を満たす企業はエンジェル税制の優遇措置Aを適用することが可能です。
令和2年の4月1日に改正が行われて優遇措置Aが適用される企業が3年未満から5年未満となりました。
また試験研究費等が収入金額の3%越えだったのに対して、5%超えとなりました。
優遇措置Bの場合
続いて優遇措置Bの場合です。
こちらは創業(設立)10年未満の中小企業者であることが絶対条件です。
設立経過年数と要件は下記の通りです。
1年未満 | 研究者あるいは新事業活動従事者が2人以上かつ常勤の役員・従業員の10%以上 |
---|---|
1年以上 〜 2年未満 | 試験研究費等(宣伝費、マーケティング費用を含む)が収入金額の3%超。または新事業活動従事者が2人以上かつ常勤の役員・従業員の10%以上。 |
2年以上 〜 5年未満 | 試験研究費等(宣伝費、マーケティング費用を含む)が収入金額の3%超。または売上高成長率が25%超。 |
5年以上 〜 10年未満 | 試験研究費等(宣伝費、マーケティング費用を含む)が収入金額の5% |
この条件を満たす場合はエンジェル税制の優遇措置Bが適用できます。
エンジェル税制申請から確定申告までのフロー
エンジェル税制を利用するまでの流れを説明していきます。
- 企業がエンジェル税制の対象企業であることを確認
- 企業がエンジェル税制を都道府県に申請
- 都道府県は確認後に企業へ「確認書」を交付
- 企業は「確認書」を投資家に配布
- 投資家は税務署へ提出して手続き
以上5ステップです。
株式投資型クラウドファンディングを利用した企業でエンジェル税制を申請する企業がまだまだ少ないので、都道府県が確認するまでに多くの時間を要します。
投資家に確認書が配布されるのは確定申告の時期ギリギリになることもありますので注意しましょう。
今後、都道府県側も慣れてくればスムーズに交付してくれるようになるはずです。
申告の方法は最寄りの税務署、もしくは税理士に相談しましょう。
e-taxから行う場合は寄付金控除になります。
エンジェル税制を実施したベンチャー企業
過去にエンジェル税制を実施したベンチャー企業を一部紹介します。
- Bank Invoice
- オールユアーズ
- MOSO MAFIA
- TAAS
- 建設テックラボ
- MedVigilance
中にはエンジェル税制が利用できる条件を満たしているにも関わらず、あえて利用しないという企業も存在します。
エンジェル税制を適用するには企業側も多くのリソースを割かなければいけませんので、多少なりとも事業に影響がでてしまいます。
投資家にとっては魅力的な制度ではありますが、企業に負担がかかることは理解しておいた方がいいでしょう。
エンジェル税制が適用される企業に出資できるサービス
現時点で、エンジェル税制が適用される企業に出資できるのは下記のサービスです。
上記5サービスはエンジェル税制の認定事業者として国から認められています。
中でもファンディーノはエンジェル税制が適用される企業が非常に多いです。
今後はさらに多くなることが予想されます。
エンジェル税制が適用される企業に出資したい場合はFUNDINNOを利用しましょう。
節税額のチェックはエンジェル税制シミュレーターが便利
FUNDINNO(ファンディーノ)はエンジェル税制で控除される金額を調べられる「エンジェル税制税負担軽減シミュレーター」というサービスを運営しています。
- 総所得金額
- エンジェル税制適用会社への投資額
- 上場株式の売買による譲渡益
この2つを入力するだけで優遇措置Aと優遇措置Bで控除できる額を自動計算してくれます。
例えば年収500万円の人が優遇措置Aが適用される企業に50万円投資したとしましょう。
エンジェル税制税負担軽減シミュレーターを利用したところ、この場合に控除される金額は99,600円でした。
このような形で誰でもすぐに負担軽減額を計算することが可能です。
海外のエンジェル税制はどうなのか??
海外のエンジェル税制についても少し記載します。
株式投資型クラウドファンディングが盛んなイギリスでは日本よりも大きな税制優遇が行われています。
下記の二つの制度があり、それぞれで控除が変わってきます。
- SEIS(Seed Enterprise Investment Schemes)
- EIS(Enterprise Investment Schemes)
SEISの方がシードステージへの投資を対象としていることから控除は優遇されています。
所得額に対する控除は下記の通り。
- SEIS → 50%(10万GBP)
- EIS → 30% (上限100万GBP)
1GBP = 140円と仮定するとそれぞれ1,400万円、1億4,000万円です。
日本よりも投資しやすい環境が整っているといえるでしょう。
エンジェル税制のまとめ
最後にエンジェル税制についてまとめます。
- 優遇措置AとBがある
- 節税効果が高い
- 確認書の発行がスムーズではない
- 控除額を知りたい場合はシミュレーターがおすすめ
- 企業側にとってはリソースが割かれる
優遇措置Aの方が節税効果は高いです。
総所得金額から控除できるのは大きなメリットといえるでしょう。
現在はまだ都道府県側でもエンジェル税制の申請に慣れてない部分があるので、確認書の送付が遅くなる傾向があります。
また、投資家にとってはエンジェル税制は大きな魅力ですが企業側にとってはリソースが割かれてしまいます。
このあたりもしっかりと理解しておきたいところです。
現在、エンジェル税制を利用できる企業に投資できるのはFUNDINNOだけなので、利用したい場合はFUNDINNOをチェックするようにしてください。