認知こそまだまだ足りていないもののスタートアップ企業において、株式投資型クラウドファンディングを利用する企業が徐々に増えつつあります。
この記事では、ベンチャー企業が株式投資型クラウドファンディングで資金調達するメリット・デメリット、魅力を解説していきます。
Contents
ベンチャー企業にとっての株式投資型クラウドファンディング
そもそも株式投資型クラウドファンディングとは、2015年5月に創設された『非上場株式の発行を通じた資金調達を行うための制度』です。
わかりやすく言いますと、「起案者は株式や新株予約権を投資家に割当てし、資金を調達できる仕組み」です。
一般的なクラウドファンディングと何が違うのかと言うと、基本的に仕組みは同じで、『リターンを株式などで配当する』ことから、株式投資型クラウドファンディングと呼ばれています。
寄付型や融資型クラウドファンディングなど最近は様々な種類のクラウドファンディングがあり、こんがらがってしまう方も多いのですが、『リターンが何か?』を意識して観ると違いがわかりやすくなるかもしれません。
- 寄付型であれば、そのまま寄付になるのでリターンは基本的に求めない
- 融資型(ソーシャルレンディング)であれば、お金を融資するのでリターンは(元本に加えて)金利
- 購入型であれば、リターンはサービスや商品
- 株式投資型であれば、リターンは株(あるいは新株予約権など)
こういった形になります。
投資家視点から言いますと、リターン設定は重要で、何をリターンにすれば投資家から支持を受けられるのかが十分デザインされていると投資することへの期待も高まり、同時に安心感も生まれます。
株式投資型クラウドファンディングを利用することのメリット・デメリットとは
ではベンチャー企業が株式投資型クラウドファンディングを利用して資金調達するメリット・デメリットはどんなことがあるでしょうか??
株式投資型クラウドファンディングで資金調達するメリット
一番のメリットは『ファンが増える』点にあります。
一例として、FUNDINNOを利用して資金調達したALLYOURS(オールユアーズ)を紹介します。
ALLYOURS は「LIFE SPEC」をコンセプトに、日常で感じるストレスを無くすプロダクトを開発するアパレル企業です。2度の株式投資型クラウドファンディングを行い、資金調達に成功しています。
<一回目>
調達金額 | 3,237.5万円 |
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投資家数 | 197名 |
募集期間 | 平成29年7月28日~平成29年8月1日 |
<二回目>
調達金額 | 3,504万円 |
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投資家数 | 185名 |
募集期間 | 平成30年11月8日~平成30年11月9日 |
上記の結果を残しました。
アパレル企業のため、実際に服を購入し着心地や質感を体感できる点や、地球環境に配慮した取り組み、またその情報発信なども見えやすく、将来性など加味しても投資家から評価されやすかった点が、短期間でも多くの支持を集めた理由と考えられます。
投資家は合計300名弱ではありますが、『出資しても良いと行動してくれる強烈なファンを増やす』ことで、株式投資型クラウドファンディングは目標額達成へ導くことが出来るため、ベンチャー企業にとってファンづくりは重要なキーワードと言っていいでしょう。
金融機関から出資を得にくい場合の資金調達方法としても注目されており、ファンも増えて資金も獲得できるという、使い方によって大きな可能性が広がる手段です。
株式投資型クラウドファンディングで資金調達するデメリット
続いてデメリットです。
- 目標額に到達しないと資金を獲得できない
- 年間に集められる資金は1億円未満
- 投資家1名から集められる金額は最大で50万円
- クラウドファンディング業者からの審査を通過する必要がある
株式投資型クラウドファンディングでは上記のようなルールがあります。
上記に加えて『(株式投資型クラウドファンディングの)知名度の低さ』や『リターンが株式であること』、『審査基準の厳しさ』などが挙げられます。
株式投資型クラウドファンディングはまだ知名度も高くなく、クラウドファンディングで悪質な事件があったり、未公開株の詐欺なども過去にあったためネガティブイメージが持たれている点は否定できません。また、投資家から直接出資を募ることはできますが、ここでいう投資家はクラウドファンディング事業者に認められた人しか参加ができません。
つまり、投資家の母数がまだまだ低いことが課題です。
そして、すべてのプロジェクトや案件が計画通りに達成されているわけでもなく、ベンチャー企業は投資家の期待を裏切ると後々の活動がしにくくなるケースも考えられます。
支持を受けられれば、一般の投資家から出資を集めることができるメリットがあるものの、リターンは株式が基本になりますので、株式を発行し投資家に分配されることになります。
ベンチャー企業としては株の配分をどのようにデザインするのか(資本政策)も重要になりますので気を付けておきたいところです。
投資家はやはり”リターン”を求めての投資になりますので、冒頭にも記述したように出資者を裏切らないための計画性や事業の将来性、お金の使い道などの透明性が求められます。
『審査基準の厳しさ』はクラウドファンディング事業者に、ビジネスモデルの将来性や収益性など様々な基準で審査されるため、投資家から集めた資金をどのように運用し、将来的な収益の確保と社会的意義のある事業であることを認めてもらう必要があります。
「この事業(プロジェクト)は良い」と認めてもらうための、“事業計画書の作成”はベンチャー企業にとっての最重要ポイントとなります。
まとめ
ベンチャー企業にとっての株式投資型クラウドファンディングの一番のメリットは、『資金調達と合わせてファンの獲得も出来る』点にあると思われます。
一方のデメリットは『資金調達額に上限がある』点や『厳しい審査基準がある』点などです。
投資家の信頼を得る意味も含め、細やかな情報発信が求められる点や、イグジット(IPOやM&A等)を持って、出資分を回収する仕組みになっているため、ベンチャー企業には将来的に株式が公開されるか株式を換金するまでの具体的なストーリーが求められます。
リスクの高いイメージを持っている投資家もいますので、ベンチャー企業は投資家にしっかりと事業への想いやサービスの魅力、価値を伝えてプロジェクトの立案をしましょう。