未上場企業に投資ができる株式投資型クラウドファンディング。
企業側には新しい資金調達方法、投資家としては新たな投資方法として注目されています。
今回は株式投資型クラウドファンディングの仕組みからメリット・デメリットを徹底解説していきたいと思います。
Contents
株式投資型クラウドファンディングとは??
株式型クラウドファンディングとはインターネット上で企業が資金調達できる仕組みです。
不特定多数の投資家からプラットフォーム上で出資を募り、出資額に応じて株式を付与します。
日本では2017年の4月にFUNDINNOが第一号案件のBank Invoiceを取り扱いしたのが始まり。
まだまだ歴史が浅いため市場規模は小さいですが、これから発展が見込まれている市場です。
参考までに2017年から2020年6月までの市場規模を紹介します。
- 2017年 → 5.2億円
- 2018年 → 14.7億円
- 2019年 → 9.51億円
- 2020年 → 8.08億円(6月まで)
2019年に減少しましたが、大きなトレンドとしては年々増加傾向です。
2019年に減少した理由としては事業者が1社撤退した影響です。
また、株式投資型クラウドファンディングはIFOやECFなどとも呼ばれています。
IFO = Initial Fund Offering
ECF = Equity Crowdfunding
それぞれの頭文字をとったものです。
株式投資型クラウドファンディングの投資可能金額
株式投資型クラウドファンディングでは1社あたり50万円までしか投資ができません。
ただし、年間の上限額は決まっていないため複数社に50万円ずつ投資することは可能です。
- A社 → 50万円
- B社 → 50万円
- C社 → 30万円
上記のような出資は問題ありません。
株式投資型クラウドファンディングのルール
株式投資型クラウドファンディングを行う企業は日本証券業協会に登録する必要があります。
また企業が資金調達できる金額は年間で1億円未満という決まりがあります。
現在のルールでは数億円規模の資金調達はできません。
国内ではKOTOBUKI Medical株式会社が調達した9,000万円が最高金額となっています。
株式投資型クラウドファンディングのメリット
投資家は株式投資型クラウドファンディングで下記のようなメリットを受けられます。
メリット1:未上場のベンチャー企業の成長を見守れる
株式投資型クラウドファンディングで投資をすれば、自分が興味のあるベンチャー企業を側で見守ることができます。
出資した企業からは定期的にIRが届き、月次やプロジェクトの進展具合を定期的に報告してくれます。
上場企業と違い、未上場企業の業績は一般公開されていませんから株主だけの特権です。
成長過程を見るのもエンジェル投資の醍醐味です。
メリット2:エグジットすれば大きなリターンが見込める
出資したベンチャー企業がエグジットすれば大きなリターンが見込めます。
エグジットとは大手企業にM&Aされたり、IPOすることを指します。
一般的にはIPOをした場合の方がリターンは大きいです。
ステージ初期で投資すれば出資金額の10倍以上のリターンも夢ではありません。
すでに海外では株式投資型クラウドファンディングからユニコーンになった企業も存在しています。
crowdcubeで資金調達したRevolutはわずか2年ほどで出資額の19倍になったそうです。
また配車アプリのUberもアメリカの株式投資型クラウドファンディングを利用して資金調達した企業の一つ。
デカコーン企業となり2019年の5月に上場を果たしました。
メリット3:エンジェル税制が適用される場合もある
ステージ初期の企業にはエンジェル税制が適用される場合もあります。
エンジェル税制とは未上場のベンチャー企業に出資した人への税制上の優遇措置のことです。
国内ではFUNDINNOで資金調達した企業はエンジェル税制が適用される企業が多いです。
エンジェル税制が適用されれば大きな節税となります。
節税しながら投資ができるのは大きなメリットでしょう。
エンジェル税制については下記の記事で紹介しています。
メリット4:株主優待を設けている企業も存在
上場企業では多くの企業が株主に対して株主優待を設けていますが、一部のベンチャー企業でも株主優待を設けています。
保有株数によって内容が変わる場合もあれば、全株主共通の株主優待を設定している企業もあります。
株主優待の内容は自社製品の提供がほとんどです。
ベンチャー企業は赤字会社が多く、上場企業のように利益を出せる段階ではありません。
それも影響して、基本的には自社の業績に響かない株主優待を設定しています。
割引券など株主が自社の売り上げに貢献してくれる優待が多いです。
参考までに未上場企業で株主優待を設けている企業をいくつか紹介します。
- 漢方生薬研究所
- オールユアーズ
- ファイレスキュー
さらに優待が設けられている企業を知りたい方は下記記事をご覧ください。
メリット5:株主総会に出席できる
出資した企業の株主総会に出席することができます。
株主総会に行けば企業の社長をはじめとした役員の人たちと交流ができ、直に話を聞くことができます。
ベンチャー企業の社長と話せる機会はなかなかありませんから、それだけでも大きなメリットです。
ただし、中には単元株制度を採用している企業もあり、その場合は株主総会に出席できない可能性もあります。
株式投資型クラウドファンディングのデメリット
株式投資型クラウドファンディングはデメリットもあります。
大きなデメリットは下記の4点です。
デメリット1:出資した企業が倒産した場合は大きな損失に
1番のデメリットは出資した企業が倒産した場合、大きな損失になる可能性があることです。
倒産時にキャッシュが残っていれば分配される可能性があります。
しかしベンチャー企業が倒産する理由の多くは資金ショートです。
つまり会社にお金が残っていない場合がほとんど。
お金がなければ投資家に返すお金はありません。
出資したベンチャー企業が倒産した場合は元本が戻ってこないことを覚悟しましょう。
デメリット2:社長と面識なしで投資せざる負えない
ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家が出資をする場合はCEOや役員に会ってから決めます。
会わずに出資を決めるということは基本ありません。
CEOや役員から事業の説明を受け、納得してから出資を決めます。
一方、株式投資型クラウドファンディングの場合は社長や役員に直接会える機会がありません。
投資家はネット上に記載された情報やデータを元にして出資するかどうかを検討しなければいけないのです。
ベンチャー企業の成長はCEOや役員の力が大きく関係してきますので、直接会わずに判断しなければいけないことはデメリットの一つと言えるでしょう。
デメリット3:流動性が少ない
未上場の株は上場企業のように気軽に売買ができません。
株式投資型クラウドファンディングの場合も同様です。
売買をするには出資したベンチャー企業の許可がいりますが、よほどの理由がない限り許可がおりることはないでしょう。
購入後に売却できないことは必ず覚えておくようにしてください。
ただし、株主コミュニティといって未上場企業の株式を取引できる市場もあります。
こちらに採択された場合は上場企業のように売買することが可能です。
規模は小さいですが未上場株のセカンダリーマーケットがあることは覚えておくといいかもしれません。
デメリット4:配当金は基本貰えない
上場企業ならば配当を実施している場合が多いです。
しかし株式投資型クラウドファンディングで資金調達した企業では配当は基本的に実施されていません。
ベンチャーは資金繰りが大変で財務的に難しいからです。
赤字の企業も多くあります。
また、未上場企業の配当は上場企業の配当とは税金も変わってくるので企業と投資家、両者にメリットが少ないです。
国内の株式投資型クラウドファンディングサービス
現在、日本国内では準備中の企業も含め、6社が株式投資型クラウドファンディングサービスを運営しています。
国内最大級のプラットフォーム「FUNDINNO」
FUNDINNO(ファンディーノ)は国内最大級の株式投資型クラウドファンディングのプラットフォームです。
運営会社 | 株式会社日本クラウドキャピタル |
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最低投資額 | 1万円 |
EXIT実績 | 4社 |
倒産数 | 3社 |
累計調達額 | 30億円 |
運営しているのはベンチャー企業の日本クラウドキャピタル。
実績はNO.1で累計調達額は30億円越え、イグジットした企業も2社あります。
株式型と新株予約権型の2つの募集方法があり、企業側は好みの方法で資金調達が可能です。
またエンジェル税制が適用される企業も多く、投資家にとっては節税しながら投資ができる機会もあります。
国内の株式投資型クラウドファンディングを牽引しているサービスです。
株主優待が必ずもらえる「ユニコーン」
運営会社 | 株式会社ユニコーン |
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最低投資額 | 5万円 |
EXIT実績 | 0社 |
倒産数 | 0社 |
累計調達額 | 2.3億円 |
運営しているのは上場企業であるZUUの子会社「株式会社ユニコーン」です。
最低5万円から出資ができ、全ての企業で株主優待が設定されています。
実績は今のところ7社が資金調達を行い、4社が資金調達を成功させました。
キャンプファイヤー傘下の「CAMPFIRE Angels」
運営会社 | DANベンチャーキャピタル株式会社 |
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最低投資額 | 10万円 |
EXIT実績 | 0社 |
倒産数 | 0社 |
累計調達額 | 1.2億円 |
CAMPFIRE AngelsはDANベンチャーキャピタル株式会社が運営しています。
DANベンチャーキャピタルはベンチャー企業のキャンプファイヤーの子会社です。
以前はGoAngelというサービス名でしたがキャンプファイヤーグループに入ったことでCAMPFIRE Angelsにリニューアルされました。
代表の出縄氏は株式投資型クラウドファンディングの前進であるグリーンシートを取り扱っていたディー・ブレイン証券の創業者です。
ディー・ブレイン証券が募集取扱主幹事として公募増資を支援した企業は、グリーンシート銘柄全体の9割を超える141社で上場した会社は19社。
国内でも抜群の実績を誇ります。
SBIグループが運営する「GEMSEE Equity」
運営会社 | SBI CapitalBase株式会社 |
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最低投資額 | 10万円 |
EXIT実績 | 0社 |
倒産数 | 0社 |
累計調達額 | 0.3億円 |
GEMSEE Equityは「SBI CapitalBase株式会社」が運営しています。
SBIグループはSBIインベストメント、SBI証券を中心にベンチャー企業支援に携わっていることから目利きは超一流です。
企業側としてはSBIグループを含めた広範囲で事業シナジーを追求することが可能です。
投資家側としても10万円という少額からSBIグループが目利きした企業に投資ができるという大きなメリットがあります。
プロが目利きした案件に出資できるイークラウド
運営会社 | イークラウド株式会社 |
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最低投資額 | 10万円 |
EXIT実績 | 0社 |
倒産数 | 0社 |
累計調達額 | 0.5億円 |
2020年の6月にスタートしたイークラウド。
ベンチャーキャピタルがグループ企業として存在しており、さらに国内大手の大和証券と連携しています。
プロが目利きした案件に出資することが可能で、投資家は企業側と株主間契約を交わすことでスムーズなイグジットが可能です。
エンジェル税制を受けられる案件や、株主優待をもらえる企業もあります。
エメラダから事業譲渡を受けたAngel Funding
国内3社目のプラットフォームとしたスタートしたエメラダ・エクイティから事業譲渡を受けたAngel Funding。
エンジェルバンクというサービス名でしたが、株式会社WEIN Financial Groupが2020年10月に第三者割当増資の引き受け及び既存株主からの株式譲り受けにより、発行済株式の過半数を取得しています。
これにより株式会社Angel Fundingは株式会社WEIN Financial Groupの子会社として再スタートしました。
まだ案件の募集はありませんが2021年度内には第一号案件がリリースされそうです。
エンジェル税制の認定業者
エンジェル税制が令和2年4月1日に改正されたことで、一定の要件を満たした株式投資型クラウドファンディング事業者も認定業者になることができるようになりました。
認定業者として認められているサービスは下記の通りです。
現在は5社。
上記サービスは都道府県に代わり、ベンチャー企業のエンジェル税制の認定業務を行うことが可能です。
つまり、エンジェル税制の認定業者ではエンジェル税制が適用される企業が多くなります。
具体的には下記の記事で紹介していますのでさらに詳しくしりたい方はこちらをチェックしてみてください。
株式投資型クラウドファンディングの実績
株式投資型クラウドファンディングでイグジットした企業、倒産した企業、国内の実績をまとめました。
イグジット実績
国内の株式投資型クラウドファンディングにおけるイグジット実績を紹介します。
IPOイグジット
現在、IPOイグジットをした企業は1社もありません。
M&Aイグジット
現在、M&Aイグジットをした企業は1社もありません。
相対取引でのイグジット
相対取引でのイグジットは4件あります。
ハーバルアイ | 1.5倍 |
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nommoc | 1.5倍 |
A社 | X倍 |
B社 | X倍 |
いずれもファンディーノで資金調達を実施した企業です。
事業会社が個人投資家の株式を買い取りました。
ハーバルアイとnommocは出資額の1.5倍でのイグジットとなります。
A社、B社については公表されていません。
倒産(清算)実績
倒産(清算)した企業は3社判明しています。
- ブレスサービス
- ユニボット
- MU
上記は全てファンディーノで資金調達した企業になります。
株式型クラウドファンディングのまとめ
最後に株式型クラウドファンディングの重要なポイントをまとめます。
- 1社あたりの出資は50万円まで
- ハイリスク・ハイリターン
- ベンチャー企業の成長を見守ることができる
- エンジェル税制が適用される場合がある
- 流動性がほぼない
- 株主優待が受け取れる場合があり
- 新株予約権での出資が可能
- 株主間契約を結ぶ場合がある
株式投資型クラウドファンディングは未上場ベンチャー企業への出資になりますので、投資面でみるとリスクは非常に高いです。
しかしながらエンジェル税制が適用されれば節税しながら投資をすることが可能です。
これは大きなメリットと言えるでしょう。
1社あたり50万円までしか投資できないなど、細かなルールも覚えておいた方がいいかもしれません。
株式投資型クラウドファンディングは国内ではまだまだ新しい投資方法になります。
これからルールが改正される可能性も十分にありますから、常にアンテナを張っておくようにしましょう。
また、現在ではFUNDINNOが国内シェアの80%以上を占めています。
これから株式投資型クラウドファンディングを始めようとしている方は、まずはじめにFUNDINNOからチェックすることをおすすめします。